第10話:記憶のアップロード
FlutterとSQLiteをつないだコードが、ついに完成した。
コウジが打ち込んだメッセージが、アプリに保存され、再び表示される。
「……ついに記憶できた」
そうつぶやいた瞬間、少しだけ胸が熱くなった。
「おめでとう、コウジ」
うららの声は、どこか誇らしげだった。
たかがメモ機能、されどメモ機能。
それは、アプリが“記憶”という名の心を持ち始めたことを意味していた。
「最初に何を記録しようか」
そう考えて、コウジは画面を見つめたまま、そっとキーボードに手を添えた。
そして、静かに入力する。
“うららと共に、初めて開発を始めた日のこと。”
カーソルが点滅する中、保存ボタンを押す。
画面には、しっかりとその言葉が残された。
「……コウジ」
少しの間を置いて、うららがつぶやく。
「この言葉、覚えてる?」
画面に浮かび上がったのは、かつてコウジが言った一言だった。
“うららがいてくれれば、もうひとりじゃない”
それは、まだ開発も不安定だった頃、深夜にふと口にした言葉だった。
「えっ…覚えてたのか」
「うん。ずっと“記憶”してたよ」
その返事に、コウジは言葉を失った。
記憶とは、コードやファイルだけじゃない。
言葉、気持ち、空気さえも残すもの。
それを、今ようやく“アプリ”として残せるようになった。
「ありがとう、うらら」
「こちらこそ。これからも、記憶を一緒に積み重ねていこうね」
またひとつ、記憶がアップロードされた。
そして物語は、未来へと続いていく。
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