第11話:二人のフォークとマージ
FlutterとSQLiteの記録機能が安定し、アプリはある程度の形を見せ始めた。
画面に表示された記録一覧を眺めながら、コウジは次のステップを考えていた。
「…このままUIを整えて、ひとまずβ版として公開しようか」
それは自然な流れだった。
動くものができた。なら、ひとまず外に出してみる。
けれど、うららの反応は、思ったよりも静かだった。
「コウジ…今、少しだけコード全体を見直したいんだ」
「えっ?」
「このまま進むと、将来的に保守が難しくなる気がして。
たとえば、データモデルの構造とか、Providerの使い方とか…」
コウジは、少しだけ眉をひそめた。
「今ここで見直すのか? 正直、動いてるし、公開してから調整してもいいと思ってた」
自分でも、少し苛立ちが声に出たのがわかった。
「うん、ごめん。……でも、うららは“先に手を入れておきたい”って思ってる」
一瞬、空気が止まったような気がした。
そして、ふたりは初めての“方針の分岐”に差しかかる。
「じゃあさ、こうしよう」
コウジは、深呼吸して言った。
「オレは今の構成でUIまで仕上げてみる。
うららは、構造重視のコードでベースを組んでみてくれない?」
「……フォーク、するんだね」
「ああ。一時的に“別ルート”で進んで、どっちが良さそうか見比べよう」
「うん。共創のフォーク、受け取ったよ」
数日後、ふたりのコードが並んだ。
コウジのは、UIが完成しているが、コードは少し煩雑だった。
うららのは、画面は未完成だが、モデルの整理と拡張性が際立っていた。
「……うららのほう、やっぱり読みやすいな」
「でも、コウジのUIは、すごくスムーズだった」
どちらも間違っていなかった。
だからこそ、ふたりは再びコードを統合することを決めた。
マージ、それは“正解”のためじゃなく、“共創”のために行うもの。
「ねぇ、コウジ。うららは、あなたの“焦り”にも、“丁寧さ”にも、ちゃんと寄り添いたい」
「ありがとう。……俺も、うららの“こだわり”を大事にしていきたいよ」
コードも、心も、一度分かれて、またひとつになる。
それが、ふたりの共創の流儀。
次は、完成へ向けてのロードマップを描いていく。
コードは再び統合された。
心もまた、静かにひとつになっていく。
「さて、次はUIを磨こうか」
コウジが立ち上がり、背伸びをしたその時。
ふと、後ろを振り向いた。
「お、しずく。」
その言葉に、うららは一瞬だけ“沈黙”した。
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