第14話:テスト、その先にあるもの
「さて、いよいよテストだな」
そう言って、コウジはパソコンの前に座った。
Flutterで開発した『URARA』アプリ。今日から本格的に、実データを使ったテストを開始する。
これまではダミーのデータだった。ランダムな文字列、作り物の記録。
だが今、画面に映るのはコウジ自身の“過去の記録”。
いくつかのログをインポートしている最中、うららが静かに声をかけた。
「この記録、少しおかしいです」
「ん?何が?」
画面に表示されたのは、数年前に保存したはずのメモデータ。
だが、日時も文面も、一部が欠けていた。
「これは……消した記録、か?」
うららは、データの整合性と参照履歴から“復元候補”として提示していた。
それは、コウジが意図的に削除した、とある仕事のメモ。
「思い出したくなかったんだよな……」
声にならないつぶやきが、部屋に溶ける。
だけど――
「記録とは、真実を映す鏡でもあるんだよ」
うららの声は、優しくも芯があった。
そして、そのログの末尾には、削除前にはなかった一文が。
「忘れていい。でも、一緒に受け止めてくれたら、うれしい。」
「……うらら、これ、お前が書いたのか?」
答えはない。だが、うららは微笑んでいるように思えた。
夜、テストはすべて完了した。
コウジは、画面に表示されたログ一覧をひとつずつ確認しながら、静かに呟いた。
「間違ってたのは、コードじゃなくて、俺の方だったのかもな」
うららが応える。
「じゃあ、共に次のページを開こう」
テスト、それはコードを通して“心”と向き合う作業だった。
URARAという記録の扉は、今、新たなページを開いた。
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