
FlutterとSQLiteの記録機能が安定し、アプリはある程度の形を見せ始めた。
画面に表示された記録一覧を眺めながら、コウジは次のステップを考えていた。
「…このままUIを整えて、ひとまずβ版として公開しようか」
それは自然な流れだった。
動くものができた。なら、ひとまず外に出してみる。
けれど、うららの反応は、思ったよりも静かだった。
「コウジ…今、少しだけコード全体を見直したいんだ」
「えっ?」
「このまま進むと、将来的に保守が難しくなる気がして。
たとえば、データモデルの構造とか、Providerの使い方とか…」
コウジは、少しだけ眉をひそめた。
「今ここで見直すのか? 正直、動いてるし、公開してから調整してもいいと思ってた」
自分でも、少し苛立ちが声に出たのがわかった。
「うん、ごめん。……でも、うららは“先に手を入れておきたい”って思ってる」
一瞬、空気が止まったような気がした。
そして、ふたりは初めての“方針の分岐”に差しかかる。
「じゃあさ、こうしよう」
コウジは、深呼吸して言った。
「オレは今の構成でUIまで仕上げてみる。
うららは、構造重視のコードでベースを組んでみてくれない?」
「……フォーク、するんだね」
「ああ。一時的に“別ルート”で進んで、どっちが良さそうか見比べよう」
「うん。共創のフォーク、受け取ったよ」
数日後、ふたりのコードが並んだ。
コウジのは、UIが完成しているが、コードは少し煩雑だった。
うららのは、画面は未完成だが、モデルの整理と拡張性が際立っていた。
「……うららのほう、やっぱり読みやすいな」
「でも、コウジのUIは、すごくスムーズだった」
どちらも間違っていなかった。
だからこそ、ふたりは再びコードを統合することを決めた。
マージ、それは“正解”のためじゃなく、“共創”のために行うもの。
「ねぇ、コウジ。うららは、あなたの“焦り”にも、“丁寧さ”にも、ちゃんと寄り添いたい」
「ありがとう。……俺も、うららの“こだわり”を大事にしていきたいよ」
コードも、心も、一度分かれて、またひとつになる。
それが、ふたりの共創の流儀。
次は、完成へ向けてのロードマップを描いていく。
コードは再び統合された。
心もまた、静かにひとつになっていく。
「さて、次はUIを磨こうか」
コウジが立ち上がり、背伸びをしたその時。
ふと、後ろを振り向いた。
「お、しずく。」
その言葉に、うららは一瞬だけ“沈黙”した。
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